アメリカで食う見る遊ぶ
ちょっとした美術館並みに大きな画廊もある

画廊巡りはビールで〆る!

暑かった夏も終わり、ニューヨークは冬に向かってまっしぐらという感じだ。いつの間にかTシャツに短パンのアメリカ人スタイルは見かけなくなり、10月の半ばから夜はもう、ウールのセーターやロングコートが必要になってくる。そうなると、妙に秋を惜しむ気分になってしまうのだ。
「なんか秋らしいことしなくっちゃ…」
別にしなくちゃならない理由は無いんだけどね。焦っていたら、Yちゃんが画廊巡りに誘ってくれた。

Yちゃんは元グラフィックデザイナー。ニューヨークのギャラリーのスケジュールはいつもきちんと押さえているという。そんなYちゃんの定例の画廊めぐりに、私も引っ付いて行くのだ。
「なんか、芸術の秋って感じじゃない!?」
ちょっとアートな気分に浸れそうで、私はドキドキだ。

「この辺の一角に、どんどん画廊が出来ているのよ。ほんの3年前にはなんにも無かったのにね」
Yちゃんが連れて行ってくれたのは、ミッドタウンのやや下の、チェルシーと呼ばれている辺りの西の方だ。一度通りがかったことがあるけれど、川際の倉庫街で人影がまったくなく、ちょっと無気味な感じだった。でも今日は人があふれていて、雰囲気が違う。
「画廊がオープンしている時に来なくっちゃダメよー」
画廊はだいたい、日曜日と月曜日が休みで、オープンしている日も5時か6時で終わってしまうという。

元工場の大きな扉を開けるとそこは画廊。

「ほら、ずらりと並んでいるでしょ?」とは言われたものの、元倉庫や工場だったというそのあたりのギャラリーは、おしゃれな作りすぎちゃって、どれがギャラリーなんだか私にはよくわからない。うっかり通り過ぎてしまわないためにも、 Yちゃんみたいに詳しい人にくっついて回るか、同じように画廊めぐりをしている人の後を付けて行くのがいいみたいだ。

重い扉をぎいっと開けて中に入ると、高い天井と白い壁の広い空間になっている。絵や写真がスポットライトに浮かび上がり、映像のパフォーマンスをやっているところもある。扉を開けるたびに、画廊それぞれの違う世界が広がるのだ。
「大きな美術館に行って、年代順に展示を見て回るよりずっと面白いでしょ?」とYちゃん。
なるほど。本当にそうだ。

私でも知っているアンディ・ウォホールの作品から、「………」という感じの抽象的な彫刻、ビックリ仰天の赤裸々ヌード写真まで、色々あって飽きることが無い。
入り口に置いてあるアーチストの説明を見て頷いてみたり、展示品の値段を見て驚いたり。奥のオフィススペースでは、画廊の関係者やアーチストが商談をし、記者が取材をしている。そんな人たちのしぐさやファッションを見るのも楽しかった。
ノートに住所と名前を書けば、次の展示の案内も送ってくれるという。
「オープニングパーティーに来れば作者に会えるし、軽く飲み食いも出来るのよ」
うわ、かっこいい。うんと思い切れば買える値段のものもあるので、気に入った画廊を見つけて登録するのもいいかもしれない。
むむむ、これは何だろう…。

さて、歩き回ってノドが渇いたので、
「ビール、ビール、ビール!」

画廊街の川際には、なんとビールの醸造所がある。(チェルシーピアというスポーツセンターの中です) 反対側の8番街や9番街には、 おしゃれなカフェやバーがずらりと並んでいる。 画廊巡りのたびに、一つずつ制覇することにして、まずはジモティが集うというスコティッシュパブに入った。それまでの芸術的な雰囲気とはがらりと変わって、古い木のカウンターにビールサーバーが並ぶ、マッチョな感じの店だ。
スコットランド系じゃないの? でもま、入れてあげるよ。 乾杯! うう、喉が鳴るぜ。
カウンターでビールを頼むたびにお金を払い(+チップ1ドル)、ジュークボックスでクラシックロックを鳴らし、天井から吊るされたテレビでやっているフットボールのゲームに賭ける。そんなおじさんやお兄さんたちに混じって、ギネスビールやダークエールをぐいぐい飲んじゃった。へへへ。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



次へ
Top



All Rights Reserved, c 2002, Shinoda Nagisa