アメリカで食う見る遊ぶ |
ハーレムからの切実なお願い アポロシアターはハーレムのメインストリートに面して建っている、古い劇場だ。 切符売り場ももぎりも座席案内の人も全員ブラックで、お客さんも 80%くらいの感じでブラックだった。あんまりキョロキョロしなかったけど、アジア人は私たちだけだったような。席も満員 というわけではなく、団体さんに売りそびれたのか、ごっそり空いているスペー スもあった。終演が発表されたばかりだというのに、ちょっとさびしかった。 でも、次々繰り広げられる歌と踊りはさすがの大迫力。フィルムで登場する地元 ハーレムのおじいさん、おばあさんが懐かしそうに昔のハーレムを語り、コメデ ィあり、パロディありの楽しいショーだった。お客さんたちは大きな声でゲラゲラ笑い、囃し立て、最後はスタンディングオベイション。本当にこれで終わっちゃうの?と隣の人に 聞こうかなと思ったその時、すごい歌唱力を披露してくれたB.J.クロスビーが、不 自由な足を引きずって舞台の前に進み出た。 「今日の公演はいかがでしたか?」大拍手。 「もし、気に入ってくださったのなら」大拍手。 「すぐにお友達に電話をして、あなたもハーレムに行ってと言って下さい」 大拍手、歓声。 「このミュージカルを始めてから、たくさんのお客さんがハーレムに来るように なりました。劇場周辺のレストランは、売上が200%も伸びたそうです」 「でも、まだまだ足りないのです。私たちが上演を続けられるように、家に帰ったらすぐに、電話をしてください」 出演者たちが口々に言う 「友だちに電話してね!」 「家族にも」 「親戚にも」 「政治家にも!」(後ろのオーケストラボックスからの声) 爆笑。 「ハーレムに行って!と言ってくださいね!」 大拍手、歓声、口笛。 という感じで、大盛り上がりでショーは終わった。 ハーレム・ソング不信の原因は、ブラック以外のお客さんが集まらないからなんだそうだ。ハーレムという場所に来ることの心理的抵抗が、まだ根強くあるとか。実際この地域に入ると、人種の構成ががらりと変わるのを目の当たりにすることになる。マンハッタンの中心から、地下鉄でほんの20分程度のところなのに。 最近は治安も良くなったと言うけれど、 「ハーレムに行こうと思っているの」と、白人系アメリカ人に言うと、 「大丈夫だと思うけど、ひとりで行かないほうがいいよ」とか 「帰りはタクシーに乗るんだよ」と言われる。 そして決まって「自分は行ったことないんだけどね」と。 ちょっとビクビクしながら出かけたハーレムの街は(大通りを少し歩い ただけだけど)、HMVはあるし、スターバックスはあるし、ソウルフードのデ リもたくさん。ミッドタウンと変わらない賑やかさだった。ディズニー・ショップもあったし、スポーツ・ショップも多くて、 サイズはバカでかだったけど値段は安かった。通りでは日本人観光客もちらほら見か けて、白人が殆どいないのが不思議なくらいだった。 電話作戦が功を奏したのか、ハーレム・ソングはとりあえず一週間の延長が決まったようだ。いつまで続くのかわからないけれど、もしご興味があるのな らぜひ行って下さい。 券はチケットマスターで取れるし、コード【JHSPBL】を使えば10ドル割引になります。 注)2002年12月末までの公演となりました。(11/15/02付) |