アメリカ三面記事便り
アラブよりずっと遠くにある極東地域

アメリカから北朝鮮方面を見てみると

日本では連日大きく報道されているという北朝鮮拉致被害者のニュースだが、アメリカでの扱いはとても小さい。
5人が帰国を果たした15日に、ニュース専門チャンネルがその模様を報じたが、その後TVニュースで見たことはない。新聞にはアジア地域のニュースとして「墓参り」や「胴上げ」の写真が出るものの、明るみになった北朝鮮核開発のニュースの脇に置かれておまけ的な扱いだ。

見出しで強調されているのは、四半世紀わたる長い囚われ生活ののち帰国できた喜びよりも、それが「たった10日間の滞在」であり、「5人は他の拉致者については口をつぐんでいる」ことだ。
「どうして日本はこの人たちをもう北朝鮮には戻さないと言わないの?」「5人のうちたった一人しか永住帰国したいと言わないなんて、なぜ?」
日本人留学生の知人がクラスメートに聞かれて、返す言葉がなかったと言っていた。

拉致問題に較べて、北朝鮮の核開発の報道は大きく頻繁だ。北朝鮮はこんなに約束破りをしていると、ここ20年の経緯が年表形式で説明される。同時に掲載されているのは、金正日総書記と握手する小泉首相の9月の日朝会談時の写真だ。キャプションは「北朝鮮の核問題について、Mr.小泉がどの程度問題提議したかは不明」と非難めいている。

週末19日のニューヨークタイムスには大きく「鯨を食べるのが大好きな環境保護論者」として、水産庁参事官小松正之氏が紹介された。居酒屋で刺身の大皿を前に「あなたたちが牛を食べてビールを飲むように、私たちは鯨を食べて日本酒を飲むんです」と。そして、国際捕鯨会議での激しい発言ぶりから、小松氏は日本では大変な人気があると。

普段この記事を目にしたのなら、私も溜飲を下げたと思うのだが、なぜこの時期にこの小松氏の記事が掲載されるのだろうかと訝った。同時に掲載されていたのが、級友と抱き合う曽我ひとみさんの写真と、その夫の元米軍兵士のチャールス・ジェンキンス氏の記事だったからなおさらだ。記事は「それは、全くありえないはずの結婚だった」の言葉で始まり、ジェンキンス氏は政治亡命したのか、誘拐されて北朝鮮にいるのか、謎は深まるばかりだとしている。

一連の記事とそのレイアウトは、北朝鮮やその周辺の国には、誘拐も約束反故もいか物食いも平気で、洗脳に抗うことが出来ない連中がいるんだと言っているように思えてしまうのは私だけだろうか? この地域の奴らはまったく訳がわからないし、歯がゆくってしょうがないんだ、と。

対イラク強攻策には反対の姿勢を見せていたマスコミも、「我々を騙し続けて援助を受けていた」北朝鮮への反感は大きい。「アル・カイダ、イラク、そして北朝鮮か…」「3ヶ所といっぺんに戦闘状態となるのか?」レポーター達の政府関係者へのインタビューはまるで煽っているかのようだ。

米政府は今のところ、関係国と協調しつつ対北朝鮮政策を進めると言ってはいるが。突然、「あの辺の不可解な奴らに任せてはおけない」とならないように、祈るばかりである。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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