アメリカ三面記事便り
街で配られていたジョー・ミリオネアの宣伝チラシ

現実よりも、リアリティ・ショー

アメリカのプライムタイムは今、「リアリティ・ショー」と呼ばれる素人参加番組があふれている。もともと無人島で生き残りを争う「サバイバー」や、大金持ちの花嫁の座を競う「億万長者と結婚したいのは誰?」と、この手の番組は人気があり、歴史も長いのだが、今やどの曜日も、2−3本のリアリティ・ショー番組が放映されている。

この百花繚乱ぶりのきっかけは、FOXの「ジョー・ミリオネア」という億万長者との結婚モノの大ヒットと言われている。この番組は、花嫁候補達のサバイバルショーでも紹介した「サ・バチェラー」のパロディー版。実際は工事現場で働く、年収約200万円の元モデルの男性が、億万長者と偽って、大勢の女性の中からパートナーを選んでいくという設定だ。最後の一人に選んだ女性に真実を打ち明け、果たして女性は彼との愛を選ぶのか、やっぱりお金が無きゃイヤだわと言うのか…、その成り行きを全米が固唾を呑んで見守ったのである。

「ジョー・ミリオネア」の最終回で、最後の一人となった美女ゾラは、真実を知った後も、彼との愛を貫く事を選択する。ドロドロの修羅場を予想していた視聴者の期待は見事に裏切られ、二人が番組から百万ドルをプレゼントされたのを見て、さらに複雑な気持ちになる。それでも、「まあ、これでよかったんだろう」と思ってしまったのは、数週にわたって二人を見続けて、親近感を持ったせいか。

この番組でFOXは視聴率の記録を作り、最終回はアカデミー・ショーの授賞式も、裏で放映されていたマイケル・ジャクソンの暴露番組も上回った。その翌週の「その後の二人」を放映した回は、CBSの記者ダン・ラザーの、サダム・フセイン独占単独インタビュー番組に圧勝した。

こうして、3月の番組改変期から、プライムタイムにはリアリティ・ショーがあふれるようになった。「マリード・バイ・アメリカ」(FOX)で、視聴者が参加者の結婚相手を選び、「アー・ユー・ホット?」(ABC)は、次々にステージに出てくる男女がセクシーさを競う。「アイム・ザ・セレブリティ」(ABC)では、昔の有名人たちがサバイバル・ゲームをし、「ミート・マイ・フォークス」(NBC)では、親たちが自分の子供にふさわしい相手を選んでいる。

アメリカは今、対イラク武力行使をめぐって国際社会で対立し、孤立を深めている。それなのに、アメリカ人は素人参加の勝ち残り番組に夢中になっていると、批判するのは簡単だ。
チャンネルを変えてニュース番組を見れば、目の据わったブッシュが不気味な声で演説しているし、中東地域に派遣された兵士と残された家族が、衛星中継で互いに励ましあっている様子を見ることも出来る。

「そんな現実を一瞬忘れるために、ついついリアリティ・ショーを見てしまうのだ」という投書が、新聞に載っているのも事実なのだ。

参考)
ジョー・ミリオネア(FOX)

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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