アメリカで食う見る遊ぶ |
ニューヨークで、SUSHI喰いねえ ところが、そんなことは全然なかったのである。今は、朝築地で競られた魚が、その日の昼にニューヨークに届く時代なのだ。(時差は14時間あるけどね)。日本の有名な寿司屋さんが、ニューヨークにいくつも支店を出している。そこでは、日本から転勤してきた板さんが、お寿司を握っている。日本と全く変わらないお寿司が、ニューヨークでは食べられるのだ。 それでも私はなかなか寿司屋に行けなかった。だってすごく高いんじゃないかと思っていたんだもん。たまにチェーンのカリフォルニア巻き系SUSHI屋に入って、欲望を鎮めていた。そういうチェーンSUSHI屋は、たいてい韓国人か中国人が握っていて、店員はラティーノだったりする。まあまあ安いけど、日本語は通じませんので念のため。 でも色々な日本人が、ニューヨークの本格寿司屋はとてもいいと言うのだ。値段だって、銀座で食べるのに比べたら、ずっと安い。空輸のネタは高いけど、ボストンなどの近海で取れた魚で握る寿司は、新鮮で安くておいしいんだよ、と。 すし田 日本人票3票 寿司前田 日本人票2票 はつはな 日本人票1票 Sushi Yasuda ザガットでダントツの一位 ボンドストリート レオナルド・デカプリオやマドンナが行くらしい ジュエル・バコ いつも予約でいっぱい などなど、情報も集まってきた。「トロ」「うに」「いわし」そして、「しめ鯖」。ずっと食べていなかった好物のお寿司が、目の前にちらつく様になってきた。生きているご褒美として寿司屋に行っても、罰は当たらないよね? 日本人票が集まる、日本人板さんが握る寿司屋は、ホントウに日本で食べるのと変わりがなかった。ボストン産だというウニは、とろけるようで日本で食べるよりおいしいと思った。アメリカ名前のイカも、コリコリして甘くて新鮮だ。残念なのは、私が大好きなイワシが、近場にはいいのがなくて、空輸物になるから高いこと。こっちで取って日本に空輸しているはずのトロが、あんまり安くないこと。 調子に乗って、ザガットに載るようなSUSHI屋にも行ってみた。Sushi Yasudaは、日系レストランから独立した安田さんが、2年前に作った店だ。大きなカウンターの中に、ずらりと板さんが並び、その中心に安田さんが居る。マグロだけでも何種類も揃えていて、ひとつひとつ説明を聞くのが面白い。安田さんのお寿司は、薄くて繊細なネタとそれに合わせて握られた小ぶりのシャリで、まるで芸術品のようだ。口に入れるとしゅるしゅると溶けてしまい、私には200個くらい食べられそうだった。 Lディカプリオが誕生パーティーをしたという(真偽不明)ボンド・ストリートは、看板が出ていない、住宅街のアパートの中にある店だ。内装がすごくおしゃれで、客はモデルみたいな人ばかりらしいんだけど、店が暗すぎてなんにも見えなかった。この店は、「これは日本式じゃないよ!」と怒りたくなるくらい、ひと皿の量が少ない。お寿司なんて、どうやって握ったんだろうと思うくらいの、小指サイズの小ささだ。隣のテーブルでは、40ドルの握りセットを頼み、小指のお寿司がちまちまとお皿に盛られて出てきたのを見て、「これだけ?」と聞いていた。あの人たち、もう2度と寿司屋なんかごめんだと思っただろうなあ。 ボンド・ストリートで懲りたので、ジュエル・バコには行っていない。何度電話しても予約でいっぱいだと言われているうちに、お酒が1本100ドルだと噂で聞いたのだ。そんなとこに私が行ったら、何百ドルかかるかわからないから、やめた。 やっぱり私が好きなのは、子供の頃からずっと行っていた、「すし春」のお寿司だ。ネタがぶ厚くって、それが大きなシャリの上にどーんと乗っている。このシャリが炊き加減も酢加減も抜群で、格別なのだ。やや握りが甘くてしなるようなお寿司を、一気に口に放り込む。口はいっぱい、目も眩む。時にはわざと、わさびが山盛り入っている。すし春のおじさんのツーン攻撃に半泣きになりながらも、おいしいおいしいと食べていた。 すし春のおじさん、元気かな。家族は私抜きで、すし春に行ってるんだろうな。真鶴は今何がおいしいんだろう。またカワハギが食べたいな…。 ニューヨークの寿司屋のカウンターで思い出すのは、日本のことばかり。ボストンマグロの背中に乗って、ビューンと帰りたくなる瞬間だ。 |