ポルトガルへイワシを食べに
生きててよかったと毎度言い

7.ポルトガル唯一の星二つレストラン

ミシュランはポルトガルのレストランには冷淡で、ポルトガル篇にレストランはたくさん載っているけれど、星がついているレストランは全土で4つしかない。(但し古い2001年版でだけど)。しかも2つ星が最高で、3つ星はなし。新鮮なポルトガルの魚を、あっさりとグリルしたり軽く煮込んだりするポルトガル料理は本当に美味しいのに、ミシュランはそれを認めないらしい。ミシュランはもともとフランスの会社だからしょうがないのかな。

その貴重なポルトガルの星二つレストランヴィラ・ジョヤの近くに泊まっていたので、タクシーで往復して行ってみることにした。ディナーに行きたかったんだけど、夜は1週間先まで予約でいっぱいだと言われたので、ランチに。


ヴィラ・ジョヤのテーブル越しに見える海

ヴィラ・ジョヤは、ミシュランにはレストランとして紹介されていたけれど、実際は小さなホテルだった。ぴたりと門を閉ざして厳重にガードされ、いかにも高級そうな、お忍びの常連ばかりが行きそうな門構えだ。タクシーの運転手さんが車から降りて門のインターホンを押すと、中からセキュリティがおもむろにゲートを空けてくれる。車が中にシズシズと入ると、車寄せの周りは立派な庭園になっていて、ホテルのスタッフとシェフが玄関に並んで待っていた。

ここでビビっちゃいけない、言い聞かせたつもりがやっぱり緊張。 「お昼ご飯を食べに来ました」 それだけ言うのが精一杯で、せっかく出てきてくれたシェフの前をすうっと通り抜けてしまった。挨拶して会話を楽しんだり、自分の好みを言ってみたり、そんなこといつかできるようになるんだろうか。

テラス側から見たダイニング。インテリアはなぜかオリエンタルムード

こじんまりしているけど豪華なロビーの先は、海を一面に見渡すテラスになっていて、テーブルが配置してある。日焼けがちょっと気になったけど、思い切って海を見渡す席に座らせてもらう。他にお客さんは二組。すんごい気取った英語を話す人と、フランス語を話す人たちだった。

アミューズ:懐石みたいな盛り合わせ(左)と子牛ののど肉とルッコラサラダ(右)

ランチメニューはディナーのメニューと違うと聞いて、ちょっとがっかりだったけど、アミューズが2種類も出てくるし、どのお皿も本当に美味しかった。かっと照りつける太陽にきらめく海を見ながらゆっくりゆっくり、全部残さず平らげてしまった。

泡立ったフワフワのソースに感動したサーモンとキュウリのスパゲティ(上左)
ダックリバーとフォアグラのパテ(上右)

カレイのキャビアソース(上左)とボラのトマトオニオンピューレ(上右)

メインディッシュは白身が重なってしまったけど、カレイとボラ。カレイには、カリカリの揚げ玉や甘いドライトマトが添えてあり、ボラは半分はフライで半分は野菜ソース乗せになっている。 どちらもソースや添え物との組み合わせで、色々な歯ごたえや味を楽しめるように工夫されている。アミューズの器や盛り付けや組み合わせの妙を楽しませようとするレシピの構成は、何だか和食の繊細さが意識されているようで、妙に嬉しくなった。


お口直しのスイーツ。デザートメニューは別にあるんだけど、もうこれで充分

帰りはホテルのパンフレットももらって、宿泊の予約は6ヶ月前までにしてくださいね、と言われて、はい、なんてニコニコ。2週末を含む最低1週間の予約が必要で、料金は朝晩の食事付きで360ユーロから、バルコニー付きのお部屋は400ユーロからだそうだ。宿泊料金の高さより、あのメニューを毎晩食べなきゃいけないと思うとあまりに太りそうで、怖くて泊まれない。でも、どんなメニューが出てくるのか、期待にワクワクしながら毎晩シェフと勝負するのも、うんとゼイタクな休暇の過ごし方として最高に楽しいのかもしれない。

ホテルの全景はこんな感じらしい


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