ニューヨーク暮らしことはじめ

アパート探しが、始まった。

インターネットでも、街のいたるところに置いてあるフリーペーパーにも、貸しアパート情報はあふれている。 街を歩けばビルには「空き部屋あります」の垂れ幕がかかっている。

そんな情報を見てコンタクトをしてアパートを探す人も多いらしいけど、私はやっぱり安全安心な「日本語の通じる不動産屋さん」に斡旋を依頼した。
手数料はちょっぴり高いけど、着いたばっかりで右も左もわからないので、契約も代行してくれて生活情報も色々教えてくれる日系不動産屋さんは心強い味方だ。

まずは居候先Gの会社が契約をしているR社のMさん。
「Gさんの会社に近くて、安全で住みやすいところを中心にご紹介しますね」と心強いお言葉。元々は建築が専門で、建築コンペに作品を出しながら、今の会社に勤めているとのこと。イタリア系アメリカ人の男性と結婚したばかりだという。
そして、友だちが「親切でよかった」と紹介してくれたA社のS君。
「マンハッタンに住むのでしたら、やはり夜景のきれいな所をおすすめします」とそそるお言葉。暑いのにスーツをびちっと着て大きな鞄を肩から下げている。外国人がイメージする日本のサラリーマンそのもののようなまじめぶり。

MさんもS君も大学からアメリカに留学し、そのままこちらで就職したとのこと。アメリカ駐在の日本人の事情にも、とても詳しい。
そしてかわりばんこに「ここが日本人に人気なんですよ〜」と色々なアパートに連れて行ってくれる。「日本人に人気」っていうのが売り言葉なのね、日本人には。

毎日毎日、ほこりっぽくて暑い中アパートをあちこち見て歩く。タクシーの止め方や地下鉄やバスの乗り方まで、教わることができて助かった。

S君お勧めの42階の部屋からの眺め。足がすくみました。
でも肝心のアパートの部屋は、みんな同じような白い壁の箱なので、何がなんだかわからなくなってくる。 窓の外には同じようなビルが林立していて「丸見え」なのも気になる。

こんなところに住むことになるのかなあ。
なんだかぴんと来ない。

それもそのはずだ。だって私は今まで、観光でも仕事でもニューヨークに来たことがなかった。街のどの辺に何があってどんな雰囲気なのかまったくわかっていないのだ。そんな状態でアパートを探そうなんて、どだい無理な話だ。
バスの2階はいつも満員
そこで私は、マンハッタンの街中を走っている「遊覧観光バス」に乗ってみた。2階がオープンになっている赤いバスで、チケットを買えば2日間乗り降り自由なのだ。今まで他の街に観光旅行に行っても、遊覧バスなんてバカにして乗ったことがなかったんだけどね。これから生活する街の事を手っ取り早く知るには、きっといい方法に違いない。

この遊覧バスははっきり言ってとっても面白かった。ガイドは名調子で通り過ぎるビルや有名レストランや通りの由来や特徴を説明してくれる。「ミネソタから来た人はいますか〜? ジョージアから来た人はいますか〜?」とお客いじりもする。ジョン・レノンが住んでいたダコタアパートの前では「ストロベリーフィールド」も歌ってくれた。
これがダコタアパートです。 おお〜。

そして私は決めることができたのだ。「オフィス街に近い辺りじゃなくって、やっぱり下町に住みたいな〜」と。

不動産屋さんたちは急に知恵をつけちゃった私に驚きながらも、ちゃんと下町にあって通勤にも便利な物件を紹介してくれた。近くには小さ目のレストランや公園が散在し、週末はフリーマーケットもあちこちで開かれるという一角だ。何だか楽しそうでしょう? アパートの部屋自体はこじんまりしたものだけどね。

ま、地縁もコネもなくいきなり部屋探しして見つけたところなんだからこんなもんでしょう。敷金礼金の制度がないアメリカでは、気軽に気に入った部屋を求めて住まいを転々とする人は多いらしいので、私もそれに習ってこれからもアパート情報には敏感でいることにする。来年はもっとステキなところに越すんだもんね〜。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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