ニューヨーク暮らしことはじめ
脂肪を脱いでマッチョになろう! なんて看板があちこちに

そして、フィットネスクラブ。

アパートを探している時から気になっていたのは、フィットネスクラブのこと。 実は私は密かなプールマニアで、水にぷかぷか浮かんでぼーっとするのが大好きなのだ。

「近所にプールがある所に住めるんだろうか?」
引越し話が持ち上がったときに、この不安が密かに頭をよぎったが、フィットネス大国のアメリカだ。日本の自動販売機と同じくらいの数のフィットネスクラブが、ニューヨークにはあると言うではないか。(言わないけど)
アメリカ人規格で大きめの、水はひんやりと冷たいプールがきっとそこここにあるに違いない。そう勝手に思い込んで、私は手荷物に水着を4枚も詰め込んでニューヨークへとやって来た。

確かに、マンハッタンにはフィットネスクラブが林立していた。全米に展開する大手チェーンから、小さな空手やヨガの道場まで、ひとつの通りには必ず1-2ヶ所、フィットネスクラブがあると言っていいくらい。
そして、一斉に新規会員募集のキャンペーンをやっている。入会金がタダになるところ。3年契約をすれば最初の3か月分無料になるところ。ふたりで入れば20%オフになるところなど様々だ。

ところが、プールのあるフィットネスクラブがなかなか無い。あっても50フィート(15メートルくらい!)とすごく小さかったりする。そんなにがしがし泳ぐわけではないけれど、15メートルのプールはやっぱり悲しい。
私は、家から歩いていける範囲を歩き回ってフィットネスクラブを探し、端から「ここのクラブにプールはありますか?」と聞いて回った。
近所にはフィットネスクラブが7ヶ所もあったのに、プールが付いているクラブはたったの1ヶ所だけ。それも銭湯並みの小ささの50フィートプールだと言う。 「地下鉄ですぐのところにある、同じチェーンのクラブにもっと大きなプールがあるよ」と言うので広さを聞いたら、「60フィート」だと言う。それって、20メートルってことじゃない。がっかり。
アメリカ人って何でも大きいものが好きなんだと思っていたのに、プールにはこだわらないのね。そういえばバスタブも小さいものねえ。
というのは私の偏見で、実はマンハッタンの建物は古いものが多いので、 大きなプールは構造上置けないというのが事情のようだ。

というわけで、歩き回った中で唯一プールがあったところに入ることにした。朝5時半から夜11時までやっていて、マンハッタン中の施設に自由に出入りできて、今ならヨットでのクルージングパーティーにも無料ご招待だと言う。
ヨットなんて要らないから会費もっと下げてほしかったんだけどね。物価も税金も高いニューヨークでは、スポーツクラブの会費も日本と同じくらいの感覚だ。お風呂プールに毎日浮かびに行って、会費を無駄にしないようにしなくっちゃ。

さっそく館内を案内してもらった。プール以外のスペースはすごく広くて、たくさんの人が自転車こぎをしたり、ベルトコンベアーの上をせっせと歩いたりしている。みんな真剣でストイックで、水に浮かんでぷかぷかなんてことを目論んでいるのは私だけみたいだ。
「ヨガは特別のスタジオでやるのよ」「スピニングのマシンは60台もあるのよ〜」と案内してくれたMistyが自慢っぽく言う。 インストラクターの号令と音楽に合わせて立ったり伏せたりして自転車をこぐ「スピニング」と、呼吸法と瞑想中心の「ヨガ」が今大流行らしいのだ。
「何でアメリカでヨガが流行っているの?」と私が聞くと
「日本では流行っていないの?」と逆に聞かれてしまった。 宗教集団がらみでヨガ道場は胡散臭く見られてしまうのなんて、難しくて言えなかったんだけどね。

本屋さんのショーウインドウにもヨガの本がいっぱい

試しに出てみたヨガのクラスは、日本で10年位前に教わった方法よりずいぶんカウントが早くって、せわしない感じがした。
「吸って〜、吐いて〜」の呼吸法の号令も英語だからよくわからなくって、吸いすぎて肺が破裂しそうになっちゃうし。
ムキムキマッチョのお兄さんが案外カラダが固くて、組んだ足の間から手を通すポーズが出来なくて苦労している様はなかなか愛嬌があった。黒人の超スリムなお姉さんのブリッジは、足が長いだけあってすごくきれいだった。
私? 私はカラダの柔らかさには自信があったけど、翌日は筋肉痛で苦しみました。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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