ニューヨーク暮らしことはじめ

買出しで力持ち。

アメリカに到着して、ホテルの部屋に荷物を下ろして、まずしなくてはならないことは「買出し」だ。
13時間も飛行機に乗っていたので、へとへとに疲れてはいるけれど、眠ってしまう前にせめて水やサンドイッチくらい手に入れておかなければ。だって時差ぼけの自分が次に目が覚めるのが何時になるか検討もつかないし、その時にお腹が空いていてもお店が開いているかどうかもわからない。

というわけで、ホテルの人に近所のスーパーマーケットを教えてもらって、出かけて行った。どこの国に旅行に行っても、市場やスーパーマーケットを覗くのが私は大好きだ。ガラス張りのウインドー越しに、天井に届くくらいたくさんの野菜が積み上げてあるのを見て、とたんに元気になった。

ところが、「入れな〜い」。
スーパーの入り口の回転ドアが重くて、ぴくりとも動かないのだ。中には人がたくさんいるのだから、閉店なんてことは無いはずだ。隣の回転ドアを見ると、人がすいすいと通っている。
「おかしいな、えい」。全身の体重をかけてドアを押すと、やっと動いて中に入ることが出来た。それ以来、どこに行ってもこの回転ドアには悩まされている。私は決して華奢で小柄というわけではないんだけど、お店も、地下鉄も、自分が住んでいるアパートさえも、入り口の回転ドアは全部大きくて重い。たいていはドアに体重をかけながらじたばたしていると、後ろから来た人が一緒に押してくれるんだけどね。アメリカ人といえどもムキムキででっぷりした人ばかりじゃないし、私よりよっぽど小柄でスリムな人も多いけど、どうしているんだろう。簡単に開く回転ドアがほしいわ、なんていう消費者の声はアメリカには無いのだろうか。

とにかく、何とか店内に入り、カゴを持って陳列棚の方へ行く。陳列棚には、色とりどりの野菜や果物が山積みになってる。こんなに積み上げちゃって、下のほうの野菜は傷んだりしないのだろうか? それとも毎日下の方と上の方を入れ替えたりしているんだろうか? (そんな面倒臭そうなことするわけ無いだろうし、実際見たこと無いんだけど)。
とりあえず必要な、飲み物のコーナーに行く。牛乳とオレンジジュースでもさっと買って帰ろう…。と思って行ったのに、棚の前に着いたとたん頭がくらくらする。
とにかく、牛乳もジュースも種類がすごく多い。牛乳は「ローファット」「ファットフリー」「ビタミン添加」「カルシウム添加」「ビタミンとカルシウム添加」「クリームリッチ」などなどなど…。
オレンジジュースは「イチゴとのミックス」「グレープフルーツとのミックス」「粒々なし」「粒々ややあり」「粒々たくさん」(粒々=Pulp)などなど。

表示をいちいち読んで選ばなくてはならないので、英語に慣れていない私にはとても時間がかかる。
「普通の牛乳と、普通のオレンジジュースでいいからください」と、店員さんに頼みたくなってしまった。

これで合計6.89リットル

何とか選んでカゴに入れると、そこからがまた大変だ。とにかくサイズが何でも大きいのだ。ジュースはだいたい64オンス(1.8リットル)サイズが主流。水とジュースとミルクなんて買ったら、たちまち5リットルの買い物になってしまう。
というわけで、こちらのお年寄りなら誰もが持っているショッピングカートを私も買いました。これがまた大きくって、牛乳なら40本くらい軽く入っちゃいそうなサイズで、家の中で置き場所を取るんで困っている。どんな商品も、もちろんカートだって、「一番小さいサイズ」を選んで買っているはずなのに。

そして、腕がちぎれそうだーとうめきながら部屋に帰ってきて、やれやれこれでやっと寝られると、買ってきた飲み物を冷蔵庫に仕舞おうとしてまた愕然。
冷蔵庫の扉が重くって、開かないんだ〜。
両手で扉を持って、綱引きでもするみたいにエイやっと腰を入れて冷蔵庫を開けるもんで、アメリカに来て以来、いつも腰が痛いんだよね。トホホホホ。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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