最近のトホホホホ…
朝6時前なのに、人でいっぱいの築地場内市場

さ〜て日本に出張だ!

社長と営業担当の同僚と一緒に、日本に行くことになった。新しく入った私も加えて、関係会社の人たちに会いに行こう。ついでに日本の市場を見て回ろうというのが主な目的だ。
私にとっては去年の夏にアメリカに来て以来の、初めての一時帰国だ。しかも外国人の上司と同僚を連れて行くのだ。日程調整や宿泊の手配などを任されて、私はコーフンして舞い上がった。

まずはホテル決めでひと悶着。インターナショナル・セールスマネージャーとして世界を飛び回るリリーは、ラグジュアリーなホテルが好きと言う。ベットはダブルで部屋は禁煙で、なるべく高層階で眺めのいい部屋を取ってね!とリクエスト。そんなこと言っても私達の出張予算だと、日本ではそんなにいいホテルには泊まれないんだけど。
元デザイナーの社長アレックスは東急ハンズが大好き。ぜひ渋谷のホテルにしてくれと言う。でも今回の出張は新幹線を使っての移動もあるし、幕張のほうにも行かなきゃならないので、渋谷はとても不便。何とかお願いして新橋のホテルに泊まることを納得してもらった。

銀座に行けばすし屋は多いし、私が大好きないわし料理の専門店もある。毎晩二人をそんな店に連れて行って、日本のおいしい食事を楽しんでもらおう…と思っていた。それなのに、日本に到着して夜ホテルのロビーに集合し、さあ食事に行きましょうと歩き出したところでアレックスが言うのだ。
「ボク、魚は嫌いなんだ」

日本酒を傾けながらお寿司をつまんで、足りなかったらじゃんがらラーメンでとんこつもいいかも、なんて思っていた私のプランは最初からがらがらと崩れた。私は仕方なく、銀座コリドー街の民芸調の居酒屋に入ったのだった。

魚を食べるのはキライなのにアレックスは釣りが大好きで、どこで聞いてきたのか出張の最後の朝は、ツナのオークションに行きたいと言い出した。つまり、築地の場内にマグロの競りを見に行きたいってコトなんだけどね。日本のプロフェッショナルのフィッシャーマンが、どれくらい大きなツナを捕るのか見たいんだそうだ。寝ぼすけのリリーまで「それは面白そうだ」と言い出した。私は知り合いのすし屋のおじさんに電話をかけて行きかたを聞き、朝4時半ロビー集合で築地に出かけた。

何言ってるのか英語よりわからなかったセリ風景

築地の場内は広くって、小型のトラックやフォークリフトがぶんぶん通っているので歩くのは大変だ。それでも、セリ見学はとっても楽しかった。外国人観光客ばっかりだったけど、見物人もたくさんいた。セリは小さな魚から始まって大型高級魚で終わるので、朝6時くらいでも十分マグロのセリには間に合う。歌うように競るセリ人と、指で合図する仲卸のパフォーマンスが不思議で面白い。見学の観光客は作業の邪魔にならないように、静かに写真を撮ったりビデオを回したりしているのに、アレックスはいちいち、このマグロはどこで取れたのか聞いてくれとか、どうやって釣ったのか聞いてくれとか言うので、シャイな日本人の私は恥ずかしかったよ。

大きいの小さいの凍っているの生の、色々なマグロを見ているうちに、私のお腹はどんどん空いてくる。だって目の前に一本100万円もするマグロがたくさん並んでいるんだもの。お腹のところをちょっとえぐってわさび醤油で食べたらどんなに美味だろう…。ヨダレを垂らさんばかりにしている私をアレックスが見て、「死体がごろごろしているのに、よく腹が減ったなんて言えるナー」とのたまった。

その後出かけた場内のすし屋さんの握りは本当においしかった。アレックスにも好みを聞いて、ちゃんと食べられるものを出してくれた。私がすしを指でつまんでぽいぽいと口に入れるのを、アレックスとリリーがびっくりして見ている。 「大食い選手権に出られるんじゃないの?」なんて言われるくらい良く食べて、私のはじめての日本出張は終了した。
見てるだけでお腹が空いてくる〜

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール




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