最近のトホホホホ…
左からアップルジュース、ディルバート、サムライ、メンテナンスマン

ハロウイーン仮装でひと騒ぎ

「今度のハロウィーンは、みんなコスチュームで来てください」
全体会議の終わりにこんな連絡があって、私はうろたえた。ハロウィーンは去年1回経験したので知っている。ケバケバ衣装にこてこてメイクの魔女やガイコツ、携帯電話や花嫁さん(♂)が、街をパレードしていた。あんな仮装をして会社に来いと言うのかしら? 
みんなに「どんな格好をするの?」と聞いても、「ナイショ」とあんまり教えてくれない。

近所の仮装用品の専門店に行ってみると、店は大混雑でレジ前はすごい行列だ。付け鼻のついたサングラスやナイロンの安ーいカツラ、猫の耳とシッポのセットや天使の輪っかなど、10ドルくらいで買えるお手軽変装グッズがずらーりと並んでいる。でもこんなの付けてってウケるのかな? だんだんやる気になってきた私には、今ひとつぴんと来ない。

そうだ、サムライになろう!と思いついたのは、もうぎりぎりのタイミングだった。ちょうどその頃映画「キル・ビル」と「ラストサムライ」が話題になっていて、テレビでも盛んにコマーシャルをやっていた。私は高校のとき剣道部だったので、その時使っていた木刀は護身用に今も持っている。実家の屋根裏にしまいこんであるはずの剣道着を送ってもらって着て、木刀持って振り回して「サムライ」とか言いえばオオウケじゃない!

早速実家に国際電話したけれど、あと3日しか日がないのに探し出して送っても間に合わないとがっかりしたのは、私より電話に出た父の方だった。
「全身黒ずくめになってニンジャというのはどうか」とか「チャイナタウンでチャイナドレスを買えば?」などと色々考えてくれて、申し訳ないやらおかしいやら。
結局サムライに変身するアイデアにこだわって、上着は空手をやっている友達に借り、ハカマはコリアンタウンの武道用具の店で、ディスプレイ用のホコリだらけのを値切って買った。赤い帯止めをおでこに巻いて、ハカマの脇に木刀を差せば、我ながらそれっぽく思えてくる。ウン十年ぶりに木刀で素振りまでして、ハロウイーンに備えたのであった。

当日ドキドキしながら会社に行ったけど、他の人たちのコスチュームは、内輪ウケっぽいお手軽なものが多かった。ヤンキースの帽子かぶってむさい格好して「マイク(=会社のヤンキースファンの男の子)」とか、ストレートヘアのエイミーがカーリーのカツラをかぶって、カーリーヘアのエイミーがストレートのカツラをかぶって、洋服も交換して「エイミーズ」とか。
ユダヤ系の人たちは赤い服着てリンゴのバッジつけて、「アップル・ジュース」なんてやってた。つまり、アップル+ジュー(ユダヤ人)ス(複数形)ってことだってわかるまで、3回聞いちゃったんだけどね。

典型アメリカ人体型のルースおばちゃんがアニメキャラクター「ディルバート」のお面をかぶって現れた時は会社がざわめいた。カラダとお面の比率が、ぴったりアニメ比率になっているんだもの。
(ディルバートはアメリカ版ぐうたらサラリーマン。オフィスでするにはぴったりの仮装かも)

ぽっちゃり体型で暑がりのルースにはお面はすごく苦しいらしく、誰かに「かぶって見せてー」と言われるたびに、ふうふう言ってサービスしてた。私は脇に差した木刀が、動くたびに周りにカチカチ当たるので、怖いよーと巨体のマイクにまで言われてしまった。ついでに木刀で脅して、コスチューム賞も貰っちゃったんだけどね。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール




次へ
Top



All Rights Reserved, c 2003-, Shinoda Nagisa