アメリカ三面記事便り
「Living on a Space Shuttle」スペースシャトルの偉業を称える本は多い

アメリカは今「コロンビアの悲劇」一色

アメリカのメディアは、スペースシャトル「コロンビア」が着陸寸前に空中分解したニュース一色だ。事故発生直後で情報が錯綜していた時には、レポーターは二言目には「テロが再び起こったのでしょうか?」と繰り返し、いささかうんざりしたものだ。結局、打ち上げ直後に、左翼にはがれた断熱材が当たっていたことが判明。「テロ説」はすぐに引っ込められた。

「The Shuttle Breaks Up (シャトル、バラバラに)」「Death Comet(死の彗星)」「The Columbia Tragedy (コロンビアの悲劇)」「What Went Wrong? (原因は何か)」…。各紙には大見出しが載り、乗組員のこれまでの人生が語られる。 娯楽番組の専門チャンネルは、番組の合間に、シャトルの乗組員とその家族に哀悼の意を表すとテロップを流している。

ニューヨーク・タイムスが事故の翌々日に一面で取り上げたのは、インド生まれの女性飛行士カルパナ・チャウラさんの人生だ。
男の子の誕生が歓迎されるインドで、カルパナさんが4人の子供の3番目の女の子として生まれても、家族は誰も喜ばなかった。彼女がパンジャブ工科大学航空学科の、初めての女性学生となった時の周囲の反発は大きく、アメリカ留学は父親に大反対された。アメリカ人との結婚も、インドのお見合い結婚の伝統から外れると、軽蔑の対象だった。
しかし、カルパナさんがインド人で二人目の、インド人女性としては始めての宇宙飛行士になった時、彼女はインドの英雄になった。
彼女は毎年2人の高校生をインドの母校からNASAに招待するプログラムを作り、学生に自宅でインド料理を振舞いながら「賛成してくれる人がいるかどうかなんて、気にしちゃダメよ。自分が信じたことを何でもやりなさい」と言っていたという。

コロンビアの破片は、テキサス州とルイジアナ州にまたがる7−800キロ四方の広範囲に散らばり、高速道路や民家の裏庭にも点々と落ちている。地面に転がるボロボロのヘルメットやバックパックの映像は衝撃的だったが、案の定シャトルの破片をインターネットのオークションサイトで売る輩が現れた。NASAは破片はすべて政府の所有物であると主張し、オークションサイトはすぐに出品を取り下げた。

幸い落下する破片に当たった人は居なかったようだが、70人が破片に触り病院に行った。残留している化学物質による火傷や発がんの恐れがあり、シャトルの燃料を吸い込むと、肺が焼けただれるという。
「破片には絶対に触らないように」とニュースでは呼びかけているが、空から降ってくるのは防ぎようが無い。風に乗ったコロンビアの破片が、カリフォルニアやフロリダ、ヴァージニアなどの大都市圏に到達した可能性は、否定されていない。地上には本当に被害がないのか、ちょっと気になるところではある。

written by 篠田なぎさ(⇒ プロフィール



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