2008年9月1日 持田直武
ブッシュ大統領の失政のおかげで共和党に対する好感度は47%に低落、民主党は58%に浮上した。今回の選挙は民主党が絶対有利。この状況下、共和党マケイン候補が副大統領候補にキリスト教福音派のペイリン知事を起用する賭けに出た。同派の年来の願望である妊娠中絶禁止に配慮する姿勢を示し、同派の膨大な保守票を確保するのがねらいだ。 ・候補者は有権者の期待と願望の権化
民主党大会がオバマ候補を大統領候補に指名した。共和党もまもなくマケイン候補を指名する。最近の党大会は派手な演出ばかりが目立つが、本来の目的は米国民が候補者に期待と願望を託す儀式である。大統領に当選した候補が就任後、この期待と願望に応えることが出来るのか。それが今後の課題だが、ボストン大学のベイセヴィッチ教授はロサンゼルス・タイムズに寄稿した評論(24日付)で、「それが出来たためしはない」と冷たく分析している。 ・状況はオバマ候補が圧倒的に有利
選挙戦の面から考えれば、この状況は野党民主党に圧倒的に有利である。ワシントン・ポストの調査(8月19−22日)によれば、有権者の78%が米国はブッシュ政権下で「間違った道に迷い込んだ」と考えている。その結果、今度の選挙にあたって、有権者の58%が民主党に好感を抱いているのに対し、共和党に好感を持つのは47%と2桁の差がある。オバマ候補がこの状況を味方に付ければ、共和党マケイン候補に対し圧倒的に有利な立場に立つと期待できる。 8月23日 24日 25日 26日 27日 28日 29日 30日 オバマ候補 45% 45% 44% 45% 48% 49% 49% 48% マケイン候補 45% 45% 46% 44% 42% 41% 41% 42%
民主党大会前のオバマ候補はマケイン候補と互角、あるいは押され気味。26日になってようやく上昇に転じた。党大会開催で、メディアの報道がオバマ候補一色になったからだ。だが、今後もこの上昇が続くという保障はない。マケイン候補が29日、副大統領候補にアラスカ州知事でキリスト教福音派のペイリン女史を起用するという大胆な賭けに出た。この起用で、マケイン候補と福音派の間にあった冷たい空気が緩み、福音派がマケイン支援に本腰を入れる気運が生まれたからだ。
・キリスト教福音派の願望
福音派がマケイン候補を本格的に支援すればオバマ候補に勝ち目はない。福音派の組織票は約2,500万票、前回04年の大統領選挙で、同派の約2,000万票がブッシュ大統領支持にまわったと言われる。同大統領の総得票の約40%だ。だが、マケイン候補は同派の指導者とかねてから馬が合わず、今回の選挙では同派の票の行方が決まらなかった。しかし、同候補が副大統領候補に福音派のペイリン知事を起用したことで、関係改善に向けた風が吹いてきた。 ・マケイン候補は賭けに勝つか
今後、福音派が組織を挙げて運動すれば、マケイン候補は当選するだろう。そして、大統領に就任したあと、妊娠中絶禁止という同派の願望に応えることが出来るかが問われることになる。しかし、冒頭のベイセヴィッチ教授の説によれば、「それが出来たためしはない」のである。米大統領は強大な権限を持っていると言われるが、実際は強大な権限行使の一部に関与していると言うほうが正確だ。妊娠中絶を禁止する場合でもそれは同じで、大統領が単独で決定出来るわけではない。 掲載、引用の場合はこちらからご連絡下さい。 持田直武 国際ニュース分析・メインページへ |
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