メインページへ戻る

米大統領選挙 クリントン夫人の独走なるか
持田直武 国際ニュース分析

2007年11月11日 持田直武

民主党は、クリントン上院議員が女性として初めて党候補の指名獲得が確実。共和党も、ジュリアーニ前ニューヨーク市長が弱点だった保守派の一部を取り込み、トップの座を維持。民主党は女性候補、共和党は妊娠中絶を容認する穏健派候補がリードする異例の展開になった。背景には、変化を求める有権者の期待がある。本選挙で、両候補が対決すれば、互角の戦いになるとの見方が強い。


・クリントン、ジュリアーニのリード変わらず

 ABCニュースとウオール・ストリート・ジャーナル紙が11月7日に発表した世論調査によれば、民主党ではクリントン上院議員が下記のようにオバマ上院議員との差を広げ、党の大統領候補の指名獲得に向けて独走態勢に入った。

 「民主党」  今回(11月7日)   前回(9月7日)
        クリントン 47%   44%
        オバマ   25%   23%
        エドワーズ 11%   16%  


 共和党はジュリアーニ前ニューヨーク市長が依然リード。前回調査では、トンプソン元上院議員が共和党保守派の期待を担って急浮上したが、その後、選対幹部がコカイン密売事件で保護観察中とわかるなど、不祥事がたたって支持が急落した。

 「共和党」   今回(11月7日)   前回(9月7日)
         ジュリアーニ 33%  32%
         マケイン   16%  14%
         トンプソン  15%  26%


 来年11月の本選挙で、民主党クリントン、共和党ジュリアーニの両候補が対決した場合、支持率は下記のようになる。クリントン候補が支持を落としたのに対し、ジュリアーニ候補が追い上げ、ほぼ互角の接戦となっている。

 「本選挙」   今回(11月7日)   前回(9月7日)
         クリントン  46%  49%
         ジュリアーニ 45%  42%



・クリントンは来年2月5日に党候補の指名確定か

 本選挙の投票日は来年11月4日だが、党候補を決める予備選挙と党員集会は1月3日から、アイオワ州の党員集会を皮切りに6月まで続く。山場は2月5日の火曜日。大量の代議員を抱えるカリフォルニア州やニューヨーク州など20州余りがこの日に党員集会や予備選挙を実施、選出される代議員の数が過半数を超えてくる。民主党の場合、この時点で、クリントン上院議員が党候補指名に必要な代議員獲得の目処をつけるとの見方が強い。

 民主党の代議員は2182人、このうち一般代議員1868人を党員集会と予備選挙で選出するが、残りの314人はスーパー代議員と呼ばれ、同党の連邦議会議員と知事が就任する。クリントン議員はこのスーパー代議員69人の支持をすでに確保した。オバマ議員の25人、エドワーズ元議員の15人に較べ、この面でも圧倒的にリードしている。スーパー代議員は各州の地元政界に影響力を持つ有力者、その支持を確保することは今後の展開に有利なのは間違いない。

 一方、共和党のジュリアーニ前市長も共和党保守派を支えるキリスト教福音派に支持を拡大した。11月2日のニューズウイーク(電子版)によれば、同派の23%が最近ジュリアーニ支持にまわり、マケイン支持17%やトンプソン支持15%を超えた。また、同派の有力指導者ロバートソン師も最近ジュリアーニ支持を表明した。同派は、ジュリアーニ前市長の妊娠中絶や同性愛者の権利を容認する姿勢に反発してきたが、この立場に変化が起きたことを示している。


・本選挙は激しく、汚い、接戦の見通し

 現状が大きく変わらなければ、来年11月の本選挙は、民主党クリントン、共和党ジュリアーニという異例の2人が対決することになる。クリントン議員は女性として米国初の党候補。また、ジュリアーニ前市長は共和党で初めて妊娠中絶や同性愛者の権利を認める候補である。ニューヨーク・タイムズは11月4日、「これほど多数の共和党支持者がジュリアーニ前市長のような政治家を支持することは、4年前の大統領選挙では考えられなかった」と伝えた。

 この背景には、米国人の意識の大きな変化がある。ワシントン・ポストは11月4日、世論調査の結果に基づいて、「米国民は現状に悲観的になり、ブッシュ政権が設定した路線から早く脱出したいと願っている」と分析する記事を掲載した。そして、「米国民の75%は、次期大統領がブッシュ大統領の路線とは違う新路線を打ち出すことを期待している」と分析。これは「民主党員の大部分、無党派の75%、共和党員でも50%が願っていることだ」と伝えた。

 この変化を求める動きが、民主党では初の女性候補の誕生を促し、共和党では福音派内のジュリアーニ支持を生んでいる。上記ワシントン・ポストの調査によれば、「米国民の69%は来年はリセッションになる」と予測している。そうなれば、米国民はますます現状からの脱出を願い、大統領候補に期待を託そうとするに違いない。同紙は世論調査と専門家の分析を基にして「全体的な流れは民主党に向いているが、選挙戦は激しく、汚い、紙一重の接戦になるだろう」と予測している。


掲載、引用の場合はこちらからご連絡下さい。


持田直武 国際ニュース分析・メインページへ

Copyright (C) 2007 Naotake MOCHIDA, All rights reserved.